地方都市の未婚化―産業構造とジェンダーギャップ

未婚化と晩婚化

 日本は長らく未婚化が問題になっています。なぜ未婚化が問題になるのかといえば、日本が長らく苦しんでいる、少子化の原因の一つだからです。未婚化というのは、結婚する年齢が上昇する晩婚化と、生涯結婚しない人が増える非婚化の二つの側面をもつ現象だとされています。

 このうち晩婚化の理由はわりとはっきりしていて、社会全体の高学歴化と女性の社会進出が大きく影響しています。今から60年ほど前の日本では、高校に進学する人は6割くらいしかおらず、中学校を出てすぐ働く人も珍しくありませんでした。ところが今では95%以上の人が高校に進み、大学進学率も50%を超えています。社会に出る時期はどんどん遅くなっていますから、結婚する時期もいきおい後ろ倒しになります。また、以前は女性が働いて活躍できる場が少なかったため、結婚することは生活を安定させる重要な手段であったのですが、現在では女性が働き続けられる環境が整ってきたこともあって、結婚を焦る必要がなくなったことも理由の一つになっています。

非婚化

 もうひとつの非婚化のほうは、もっと原因が入り組んでいます。というより、現在もよくわかっていない部分が多いのです。50歳になって結婚したことがない人の割合を、統計上は「生涯未婚率」といいますが、この割合が近年ますます高まってきています。

 しかし、厚生労働省の調査によると、実は結婚したい人の数は昔に比べてそれほど減っていません。なのに非婚化が起こっているということは、「結婚したいのにできない」人たちが増えているのです。ではなぜ結婚できない人が増えているのか。

 最大の理由は、雇用が不安定化したことだと考えられています。2000年前後から多くの仕事が非正規に切り替えられ、不安定な働き方を余儀なくされる人々が増えました。生活が安定しないことで結婚に踏み切れない人が多く、結果として結婚できない人が増えてしまったのです。

 他方で、経済的な条件が整っていても、適当な相手にめぐりあえないという理由で結婚できない人もいます。出会いの機会だけでなく、交際経験そのものが少ないという人も多くなってきて、結婚したくても相手がいないという人たちが増えているのです。

 また一方、結婚したくない人の割合はそれほど変わっていないとはいえ、長期的に見れば少しずつ増加傾向にあります。なぜ結婚したくない人が増えているのか。これも未婚化を考えるうえで大事な問題です。

地方と未婚化

 このように未婚化の原因は、どうやら一つや二つではなさそうだということがわかってきました。とくに地方では、東京や大阪などの大都市圏と違い、若者、とくに若年女性の流出という事態と並行しながら未婚化が進んでいます。地方から出て行った人たちは大都市へ行くので、東京などの大都市では女性余りによって、逆に地方は男性余りによって未婚化が進んでいるような形になります。同じ未婚化でも、この差異は注意深く考える必要がありそうです。

 未婚化の問題は21世紀に入ったころから盛んに研究されるようになってきたのですが、現在までのところ、他の先進国でも多かれ少なかれ未婚化が進んでいるということ、なかでも日本は結婚しにくい国の一つであるらしいということも、明らかになっています。このように複合的な理由で発生している未婚化を、もう少しシンプルに理解することができないか。そして、家族を持ちたいのに持てない人を、少しでも減らすことはできないか。こんなことを考えて研究しています。

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