貿易や投資の自由化によって発展する国際経済

いくつかの国が同じ通貨を使う

 27か国が加盟するEU(欧州連合)では、20か国がユーロという単一通貨を使っています。ドイツのマルクやフランスのフランは、今はもう流通していません。このように先進国を含む数か国が集まって単一通貨を使用している経済圏は、世界中でこのEU のみです。

 皆さんは、将来日本の円が消えて他の国と同じ通貨を使用するなんて未来を想像できるでしょうか?

ユーロ導入までの道

 現在のEUの歩みは第二次世界大戦後からスタートしました。1952年に、フランスと旧西ドイツの国境にあった石炭・鉄鋼の生産を共同管理するための機関として、両国およびイタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルクの6か国でECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)が創設されました。その後エネルギーの共同管理のためのEURATOM(欧州原子力共同体)、経済統合を実現することを目指すためのEEC(欧州経済共同体)が設立され、これら3機関が合体してEC(欧州共同体)になった後、現在のEUに発展してきました。加盟国間で“関税”をなくしてモノやサービスを自由移動させ、同様に“労働者(ヒト)の自由移動”も実現、対外的には関税を共通化するという、まさに国境のない一つの国のような圏域を作り出し、加盟国も増大させてきました。

 そして、1991年に単一通貨が導入されたのです。このような欧州の取り組みは、経済活動をより活発にして加盟国の経済成長を高め、かつ欧州の恒久的平和を創出することが目的でした。

 大学時代にスペインのEC加盟に出会ったことがきっかけで、このような加盟諸国の経済活動を活性化させ、ひいては世界経済の発展につながる「地域統合」や「貿易の自由化」に大いに興味を持ち、研究テーマとすることにしました。

出所:欧州委員会HP  https://eumag.jp/article/basicinfo0824a/

「地域統合」や「貿易の自由化」がなぜ経済活動の活性化につながる?

 貿易を行うときに“関税”があると、消費者はその関税の分だけ多くのお金を払わなければなりません。しかし、もし“関税”がなければその商品が生産されている国の人と同じ金額で購入することができます(厳密に言えば、輸送費や保険などのコストはかかりますが、その商品に対する価値は生産国と同じになります)。そうなると、浮いたお金で他のモノやサービスを購入できるわけです。したがって、諸国間で“関税”をはじめとしたさまざまな規制がなくなれば、それだけ世界中の人々や企業、そして政府もより多くのモノやサービスを購入でき、経済が活性化するというわけです。EUが目指してきたのは、まさにこういった経済効果です。

 また、関税がなくなれば、同じ商品であればより安い方が買われることになり、より良い商品をより安く生産しようという競争が諸国間で起きてきますので、この点においても我々消費者にとって好ましいことになります。

 そのため、EUほど高いレベルの経済統合ではないにしても、「貿易の自由化」による経済的なメリットを得ようと、多くの国が「自由貿易協定」や、貿易以外の様々な分野でも協力をしていこうとする「経済連携協定」を締結してきました。

現在は「貿易の自由化」だけでなく「投資の自由化」も

 日本もTPP(環太平洋パートナーシップ)やRCEP(地域的な包括的経済連携協定)といった協定に調印して、「貿易の自由化」だけでなく、「投資の自由化」や知的財産の保護や自由競争を促進するためのルールづくりを進めています。「投資の自由化」とは、企業の資本移動を諸国間で自由にできるようにするもので、その結果、「貿易の自由化」同様、国際レベルでの競争を促進させ、経済を活性化させることが目的です。

 このような「投資の自由化」によって、日本企業が世界中で生産活動や販売活動を展開できるようになるとともに、海外の企業も日本に進出しやすくなってきました。このように、本国以外の国で生産活動や販売活動をする企業を「多国籍企業」と言います。我々の回りを見渡しても多くの海外企業が存在しています。将来、皆さんの就職先の多くが多国籍企業となる日もそれほど遠くないかもしれません。そして、世界経済はこれからもダイナミックに展開していくでしょう。

 今後は、特に日本を含むアジアでの貿易や投資の自由化によって、どれだけ大きな経済効果が生まれていくのかを中心に研究を進めていきたいと思っています。「アジア版EU」が数十年後か数百年後には作られて、日本の円がなくなるかも?なんてことも考えています。

出所:経済産業省 https://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/epa/index.html

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