多胎育児支援の地域偏差をなくすには?多胎育児の増進型地域福祉

多胎って?

 双子、三つ子など二人以上の子どもたちを「多胎児」と言います。そして多胎児のおよそ98%が双子であり、さらに多胎の出産は、およそ100件に1件の分娩、すなわち約1%の確率で起こっている出産です。遺伝的要因や、生殖補助医療の影響によって多胎児を妊娠することもありますが、親類に双子がいなくても、不妊に対する治療を受けていなくても、双子を妊娠する可能性があります。
 では、みなさんが抱いている双子のイメージはどのようなものでしょうか。「そっくり」「全て一緒」など、二人は一つであるように、“同一であること”の印象が強くありませんか?もちろん、シンクロするような場面を見ることは多くありますが、双子であっても一人の「子・個」であり、遺伝子がほぼ同一(100%ではありません)の一卵性双生児であっても性格はおよそ異なります。ではこの、「双子=同一性が強い」というイメージや、「双子であること」が何の問題をもたらしているのでしょうか。

双子であることが社会問題?

 「双子を産み、育てる」ということについて具体的な育児イメージは未だほとんどの人にはわからないのが現状です。私も双子の母ですが、もちろん産むまで全く知りませんでした。「みんなどうやって育児をしているの?!」と、『産んでから』気づくのです。産後は想像以上に睡眠時間はほとんどなく、赤ちゃんたちは同時に泣き、家族以外の助けを探す充分な時間もありません。外出にはたくさんの荷物を準備しなければならず、さらには段差やスペースに伴う移動や環境による困難が生じます。このように、実は多胎の育児は多様な困難を抱えやすく、一人の赤ちゃんを育てるよりも2.5〜4倍も虐待死の可能性が高い育児だとも言われています。(日本多胎支援協会調べ:https://jamba.or.jp/research/kodomokosodate_2017/)

 昨今では、妊娠期からの切れ目のない支援が必要だということが少しずつ認識されてきましたが、未だ地域によって社会的、福祉的な支援の偏差があります。しかし、日本全国画一的な支援が必要なのではありませんし、地域ではできること、できないことの限界があります。地域性を鑑み、行政と民間の力をいかに繋げ、お互いにできることを実現化し、支え、支えられるような支援が地域に拡充するようにはどうしたらいいか、ということを研究しています。

当事者も、そうではない人も助け合えるような幸せな社会に

 この現象をもう少し広い視野で考えてみると、社会問題を抱える「当事者」と「そうではない人」に分けられます。とすると、社会問題を抱える当事者は、当事者でなければわからない苦しみを抱えているかもしれません。また、その苦しみの根底には、伝えることすら難しいという事実が存在していたり、さらに論理的に、かつ客観的に伝えなければ、「そうではない人」には伝わらないままかもしれません。しかし、その追求と、行動の先には苦しみの真逆である、“幸せ”を作り出せるとも思うのです。そしてこの幸せを作る、というプロセスを踏む地域福祉を“増進型地域福祉”と表現します。不幸をなくす福祉ではなく、一人一人の幸せと地域の幸せを生み出すにはどうしたらいいかということを日々考えています。

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